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展示「ティムバートンの世界」

2014年の締めくくりに、六本木ヒルズ森タワーでティムバートンの展示会に。

ティムバートンといえば「ビッグフィッシュ」「チャーリーとチョコレート工場

シザーハンズ」「バットマン」「ナイトメアビフォークリスマス」などなど、

もともと知っている作品がいっぱい。

家にもDVDがいっぱい。

曲線的な絵とホラー&メルヘンな世界観を持った人という印象があった。

 

今回ティムバートンの展示会はチェコをはじめ世界ツアーを

2013年3月からスタートしたそうだ。

日本は二カ国目として森タワーで開催され、日本には初上陸となった。

もともと「ティムバートン展」がNY MOMAで2009年に開かれ、

その時は作品が時系列に並べて展示され大成功だったらしい。

「ティムバートンの世界」では、時系列ではなく、

プロジェクトやモチーフごとに区分された展示方法が採用された。

 

展示を見終わった感想としては、時系列のままの方が良かったな。。

というところだろうか。

ティムバートンのスケッチがたくさん展示されており、

売れない時代から有名になりはじめた時代まで数々の作品を見ることはできたが、

モチーフごとに分けているといいつつも、あまりジャンル分けされた印象を受けず、

逆にメリハリのない展示になってしまった感じがあった。

結局、大量の絵を見た感はあったが、それがどういう背景で書かれたのか、

ティムバートンはどういう人物だったのか、

どういう意味をこの作品に込めたのかといった情報があまりに

ざっくりとした概要でしかなく、せっかく展示会に来たのに画集を

見ているような気持ちになった。

 

作品自体はどれもさすがで魅力的だった。

しかし、ティムバートンのことをはじめからよく知っている人だったら良いが、

あまり馴染みのない人が行ってティムバートンの作品を理解できてその人を

好きになれる展示だったかというと首をかしげるところもある。

反対に、初めからティムバートンを知ってる身としてはもう一歩

作品に踏み込んだ解説や背景、売れない時代やインディーズの頃の作品や

人物像が観れると思っていたので、がっかりしたところもあった。

500円払ってイアホンを借りたクリスヘプラーの解説も展示パネルとほぼ一緒で、

あまり目新しい情報はなかったのが残念

結果、絵はいっぱい見たが、なんだか釈然としない展示だった印象がある。

 

展示自体は批判的になってしまったが、

ティムバートンのスケッチや作品はさすがだった。

ホラータッチや皮肉の込めた作品であっても、

笑ったりかわいいと思える独特の世界。

ゴジラが好きだからそれに託けておばさんと組み合わせた怪獣、

マザラを生み出すような感じとか、

一見パロディチックに思われるものもティムバートンワールドの中で調理されると

パロディが一人歩きして完成された作品になってしまう。

そこまで出来るのは彼がとてつもない発想力と創造力の持ち主だから

ということがわかる。

おまけにティムバートンは言葉遊びが巧みで、

まさにマザラのネーミングからも分かるように、

韻を踏んでリズムを取りながらも鋭いメッセージを感じることができる。

ちなみにマザラはヘアカーラーをロケットにしているゴジラ風のピンクの怪獣だ。

 

ティムバートンはレストランの紙ナプキンからノートの紙、

ディズニーで勤めているときに会社にあったアニメーション用紙などを用いて

絵を描いており、紙とペンさえあればいつでも作品作りをしていた。

下書きっぽい作品のボリュームはかなり多く、

彼にとって絵を描くことは食べる事と同じような感覚で、

ごく自然にやってしまう衝動的な欲求のように思えた。

それらの作品はどれも物語を持っており、

今にも動きだして映画の主人公になりそうなわくわく感があるのだが、

彼は常に脚光をあびる人生だったわけではない。

全く意見が採用されない時や、ディズニーでやりたくない仕事をやらされていた

暗黒時代みたいなものも経験している。

それでも努力をして有名なった彼に勇気を貰えるのはそういう

ところなのかもしれない。

 

作品を数センチの距離で観察できるのは興味深かった。

展示のキャプションに一点一点、なんの画材を使用したかが書いてあり

(ペン、インク、鉛筆、水彩など)白黒の絵でも多くの画材を組み合わせて

描いているのが見受けられた。

個人的には絵の描き方は全くの素人なので

画材の組み合わせ方や影のつけ方など、単純に興味が湧いたのだった。

 

唯一心残りだったのは展示の中でティムバートンの若い頃の自作自演の映像を全部

見ることができなかったことだ。

展示に行ったのが休日で人が多くて部屋も狭く、

途中立ち見に疲れて全部見るのを断念してしまった。

ただ、その映像を数分見ても分かるように、彼は常に何かをクリエートしていて、

アメリカ人っぽく何かを皮肉にしてギャグにしながらも遊び心を忘れない

本質の持ち主だった。

だからこそ色んな実験的作品も見て取れた。

そんな中、映画になったナイトメアのキャラクターや継ぎ接ぎの世界観は、

本当に彼が映画に実現したかったお気に入りの描写だったのだろう。

色使い、発想力、世界観といつも魅了されるティムバートン。

展示としては少し物足りなさはあったものの、改めて彼の作品を見ることによって、

今後の作品もより一層楽しみになった。